1999-01-01から1年間の記事一覧

 朝の来ない部屋

コンクリートの部屋に住みたいと言った 打ちっぱなしのけばだった 冷たい壁に囲まれて眠りたいと言った ようこそ窓のない部屋に ようこそ朝のこない部屋に そして裸足のまま 月と同じ光沢のヒカリを眺めて あなたの待つ人に私はなりたい

 多分幸福な1日

昼に起きてタオルケットを洗った 台所で虫を3匹殺した 夕方おやつを買いに出かけた 日の暮れかけた線路沿いの道で ランドセルを背負った子供とすれ違った 太った猫と目が合った 帰り道歩きながら あずきあんと焼きいもあんのタイヤキを食べた 家に帰ってお…

 赤いばら

恋人にプレゼントする百本のばら 赤と白の割合はさて何本ずつ? 赤百本。 そう訊かれて間髪いれずに短く答えた 私を見て友達は含むみたいな笑みを浮かべた 白いばらは、あまえたい人 赤いばらは、つくしたい人 なるほどねと笑って言われた 私は強引に話を逸…

 飴色の瞳の猫

あなたは人がほしいと思うものを持っている けれどあなたは幸福ではない なぜならあなたはあなたのほしいものを持っていないから あなたはそれを得るためにいくつかのものを捨てようとする 右手の中指にはめたオニキスの指輪 端の黄ばんだ原稿用紙の束、束、…

 恋をするなら

死んでみるなら8月の昼間 耳元でささやくダイヤのピアスは0.7カラット 眠気ざましの熱い紅茶は76度 武器にするブーツのカカトは13センチ 生まれ変わったら百万年ごとに呼吸する青い鉱物 月を見るなら十六夜の晩 恋をするなら3番目に好きな人と

 アルコールへの道

ワインきらいビールきらい カシスソーダきらいカンパリオレンジきらい ラムレーズンのアイスクリーム すき

 "dear mam"

さみしいって言わないで かなしいって言わないで せつない せつない気持ちが よせてくる その波が ぼくから ことばをうばう うごきをうばう できれば にくしみのことばを 聞かせて あなたのなみだを見るより あなたのさけぶ声が 聞きたいんだ

 十一月と十二月

十一月が十二月に言った 私はあなたのことが好きではない 私の愛するあいまいで繊細な 雨や朝焼けや人の心を 無遠慮に彼らを騒々しく攻めたてる あなたなどに譲り渡したくない 十二月は笑って答えた 私はいつも人をまっすぐに見ない 傾いたあなたの視線を愛…

 決断

決断がおりてくる 君の胸の中に 最初それはりんかくもはっきりしないちっぽけな光で 日がたつごとに少しずつ少しずつ大きくなる やがてそれは君の小さな身体の中でつよく熱く結晶して 君を見る全ての人にその光の存在を教える 決断がおりてくる 君の胸の中に…

 真実

世界でいちばんきれいなうそを君にあげる 死んでも君をあいしてる 世界でいちばんくだらない真実を君にあげる ひとの心は変わるものだと

 世界の値段

なにかを手に入れる生き方をしたいのなら あなたの指にはめているものをあきらめなさい すべてを手に入れたいと思うのなら 裏切られるのを覚悟しなさい 世界はあなたが思うほど良くも悪くもないのだから

 誰にも届かない歌

誰にも届かない歌を歌い続けるがいいさ ただ自分の心が死ぬことのないように

 ×

過去をもう一度やり直すことはできない あなたに私を訊くことになんの意味があるだろう? 私が今まで受け入れてきたバツのすべてに あなたが答えをくれるわけでもないのに

 運命の人

本当はそんなこと信じてないんだろ? だれもお前を抱きしめたりしない わかってる自分を認めたくなくて笑うんだろ? 「運命の人」なんて 現れたらその場でホームから突き落としてやりたいくせに

 苔

誰にもなりたくない なんにもなりたくない 私は死んでも私のまま にぶくかがやく あの岩の一部になる

 S・Sさんのこと

裏切られても人は忘れることができると友達が言う 目を閉じて彼女のことを思いだしてみる あの人は私を裏切ったんだろうか? あの日ついた傷はもう癒えているのだろうか? 胸の奥でしんと白い花が咲く 彼女のことがとても好きだったとセーラー服の私が言う …

 カウントダウン

すべての約束をゼロに戻して さあ今から君の死への 新しいカウントダウンがはじまる

 forever friend

世界で一番きれいなものをみせてやると やつは俺に言ったんだ エメラルドグリーンの海の底に沈む巨大な船の死体 そこに住むたくさんの仲間たちの話をしてくれた やつは俺の一番のともだちだったから 世界中の誰に訊かれても 俺はそんなやつ知らないって言う…

 啓明

藍色に染まった8月の空に 両手に閉じこめた涙を放そう 口に出せないまま死んだ たくさんの言葉たち 今こそ天に昇って ひそやかに輝くひとすじの啓明となれ

 紙ひこうき

ねえ、僕は精一杯やったよ だから後悔なんてひとつもしてない ただ明け方の線路に捨ててしまった 紙ひこうきの行方だけが気がかりなんだ だって空をとぶかたちにつくられた あの白い紙ひこうきはきっと空をとびたかっただろう どこまでも続くあの青い空を た…

 残酷の花束

気の狂った人間の目を見たことがあるかい? それは底の見えないどこまでも続く真っ黒な穴 どんな光も届かない永遠にからっぽな深い暗闇 覚悟してのぞき込んだつもりだったのに思わず悲鳴をあげそうになった ぎゅっとくちびるをかみしめて強張った頬を無理や…

 バラード

年をとったら バラードがきけない人間になっていた それは残された時間、一分一秒を 惜しむ気持ちがあるからでしょうか?

 アノホシノヒカリ

こわいことがたくさんあって 生きているのがつらかった なにもかも忘れてやり直したいと願ったこともあった だけどどんなに闇の深い夜でも しんと光を放ち続ける星の姿が消えなかったんだ 目を閉じれば今も見える あの星が輝き続ける限り 僕は永遠に僕を手放…

 銃と自由

あのとき、彼女は私に言ったのです。 そのみにくく太った短い腕を私の髪に伸ばして、 てらてらと濡れた赤いくちびるをなめくじのかたちにゆがめて、 彼女は私に言ったのです。 「ああ、なんてかわいそうな子だろう。」 そうです。ひきがねをひいたのは私の指…

 失われた名前

誰の声がしたんだろう 小さな声で私を呼んだ 頭の底にのこる 風鈴みたいに高い声で 私の名を呼んだ 今では誰も使わない呼び方で 私のことを呼んだ 左の肩ごしにふりむくんだよって 言ったあなたのことを 思い出した

 片恋のしるし

あなたのことを夢に見たからといって 私があなたを好きだということにはならない あなたと話している白いワンピースの女の子の背中に 缶コーヒーをぶちまけてやりたいと思ったからといって 私があなたを好きだということにはならない あなたが私の視界にいる…

 エンドレスな日常

私には帰る家がある 私には行く場所がある 私には家族がいる 私には友人がいる 私にはほしいものがある 手に入れる方法も知っている それは永遠に続く日常 毎日は適当に平穏で時折騒がしい 不満はない けれど当然それを幸福とも呼ばない

 六月の花嫁

六月に結婚する君へ 心からの祝福ととびきりの呪いをあげる 少しずつ色を変えてゆくアジサイの花びらのひとつひとつにこめられた 一千万の憂鬱がいつか君の心を切り裂くように 白い花を髪に飾って微笑む君に死んだ六月の祝福をあげる 裾を引きずるドレスの重…

 ターニングポイント

そうしてやつのくだらない言い訳を君は全部信じた その頭のどうしようもないやわらかさは まるで熟れたざくろのようだったね 今ならわかるだろう 君は信じちゃいけなかったんだ なぜってやつの言葉がまったくのでたらめだってことを 君はよく知ってたんだか…

言葉なんてなんの役にも立たない。 本当にそう思うのなら、何も言わなければいいじゃないか。 黙ってただ運命を呪えばいい。そうだろ?