銃と自由

あのとき、彼女は私に言ったのです。
そのみにくく太った短い腕を私の髪に伸ばして、
てらてらと濡れた赤いくちびるをなめくじのかたちにゆがめて、
彼女は私に言ったのです。
「ああ、なんてかわいそうな子だろう。」



そうです。ひきがねをひいたのは私の指。
死んだ家畜のようにどさりと地面に転がった彼女を撃ったのは私の銃。
否定する気はありません。
私の中でずっとぐずぐずとうずまいていた、
はっきりしたかたちを持たなかったものが、
不意に意志を持ったのはまさにあの瞬間なのです。



今、あなたは黙ったまま私を見ている。
口に出さなければわからないと思っているのでしょう。
馬鹿な大人だともうひとりの私が笑っています。
世界の半分を見ないように目を細めている、
あなたもいつか私に言うのでしょう?
「お前はとてもかわいそうな子だ。」



あなたは私に自由をくれると言う。
どうか楽しみに待っていてください。
私の銃があなたとあなたを許す世界の全てを撃ち殺す日が、
近い将来きっとやってくるでしょう。






偽善者の笑み。もうひとりの私。
銃と自由。あなたの胸を撃つもの。