2001-06-01から1ヶ月間の記事一覧

 midnight

夜中、一瞬だけさびしくなって、たとえばこんなときだれかに(だれかってだれかだよ)電話をかけたりメールを書いたり、そこまでいかなくても声に出して名前を呼んだりできれば、なにか変わるのかなって考えたりする。だけどわたしは夜中訪れる一瞬のさびし…

 夏至

話をしてもいいかな 今日まっしろなあじさいを見て うまれてはじめて あの花をきれいだと思ったとか 二台並んだスクーターに 同じくらい太った猫が一匹ずつ こんもりまるくなって 乗っかってたとか 大学で見た桃色にざわめく夕焼けが とほうもなくきれいだっ…

 むなしい

ゆめのなかで すきな人にだいてもらった かおがこんなに近くにあった うでやむねにふれる からだはしっとりとあつかった そんな話をしたら 友だちに むなしいね と 言われた ふん そりゃあんたにはそーだろーよ けっ と思って とてもむかついたけれど とても…

 いない

だいすきって なんど言っても きみにはとどかない それは きみがもういない からじゃなくて ぼくがもう いないからだ

 相手

あいしてほしいんじゃない あいしたいんだ だきしめてほしいんじゃない だきしめたいんだ だから 相手なんてだれでもいいんだ あなたじゃなくても あたしじゃなくても

 ハーフ

お父さんとお母さんがリコンした そうしたらあたしからはお父さんがなくなった 区役所の窓口に 二回目の連名の書類を出す前から ふたりの心や身体はきれいにわれていたのに 心や身体にかたちがついていっただけなのに その前と後では大ちがいだ 名字が変わる…

 Nくん

午後十時過ぎ 高田馬場駅で 山手線のホームにつながる階段をのぼりながら 肌にまとわりつく六月特有の雨に悪態をついていたら そんなにイヤかなあ。とNくんが言った ほら、俺、ずっと運動してたからさ。 梅雨も夏も汗をかくのもキライじゃないんだ。 わたし…

 じゆう

あついなら ぬげばいいんだ ねえ なにもこわくないよ このへやでは ふくをぬごうが にくをきようが だれもきみをとがめない だれもきみをみない ことに いきづまるまで きみはじゆうなんだ

 ヒア

髪を切ったら笑うよ だからもう少し待って もう少しだけ 世界は暗黒って気分に ひたらせてよ 今 世界でいちばん不幸って顔してる あたしを馬鹿にしてもいいの ただもう一度うなずいてよ うそでいいから もう少し もう少しだけ ここにいたいんだ あたしはそん…

 ちっそく

やらなくちゃいけないことが 束になってぼくをせめる 髪をいくらたてても足りない ちっそくしそうだ だけどこれがなかったら 本当にちっそくしてしまうことを ぼくは知ってる

 サラダ

午前三時 ばりばりと生サラダを食べる 小さな器に盛られた ローストチキンとアスパラガス サニーレタスにカラーピーマン にんじんとレタス ごまのドレッシング 五百八十円のサラダ 自分では決して買わない 昼間お父さんが買ってくれたサラダ おいしそう ひと…

 ひみつ

学食でごはんを食べながら 生理の話をするあの子は 廊下でキスするカップルを見ると ひどくおこる 明治通りを歩きながら 便秘の話をしたわたしに 十五分も説教をしたあの子は 観覧車の中でブラのホックを外す そんなふうに 女の子というものは 似ているよう…

 T

ランドセルに わざと乱ぼうにほった きょう おぼえたばかりのアルファベット ざり、と すべったカッターナイフの先が 十字をつくる 「これ、なに?」 なおちゃんにきかれても ぜったいにこたえない あたしはあしたから タカナミをしょって 学校に行く

 ラズベリー

だいすきな歌を聴いて わたしが元気になれるくらいに わたしの存在が あなたの力になってるといい よわいこころ おもいからだ 問題はなにひとつ解決してなくても たちどまって少し笑う だいすきって思う 世界がほんの少し色を増す 意味はないよ だけど まほ…