1995-04-01から1ヶ月間の記事一覧

 あかり

たのしい時には歌おう かなしい時には笑おう うれしい時には電話をかけて つらい夜にははやく眠ろう くるしい時はひとみをふせて その時がすぎてゆくのを だまって待とう 窓の向こう 一日を誠実にこなした街に うすやみがおりてくる おとずれた夜に しずみこ…

 夏、知らない街で

独り言 ぽつりとつぶやいた 猫のあくび 青い空 みあげてため息をついた 犬の遠吠え 白い雲 ちぎれて南へ行った トカゲのしっぽ 夏のまんなかで 行くあてもなく座り込んだ アスファルトの道端 やあ と あいさつしたみたら 電柱の向こう 静かな声で せみが鳴い…

 ほのお

こえられないかべ つかみきれないおもい そして とどかないゆめ そんなものを 人はいつまでもかかえて 生きてゆくのだろうか 自分のからだの中に ねむるほのおを知らずに生きてゆく そんな人もいるのだろうか なみだが出るほどさびしくて そして幸福な そん…

 失恋

はやくちことば つむぎだすくちびる 氷のかけらおしあてた いっしゅんのひやりを待ってる きこえないメロディ つづるゆびさき 手をやすめたからだの中に ちんもくがながれこむのを知ってる わすれられたやくそく くりかえすまなうら こわれたえがおの破片あ…

 春到来

春の風は鼻歌まじりに南から吹いてくる 重いコートは冬の置きみやげ タンスの奥にしまいこんで わたしは大きく伸びをした たとえばうまくいかない毎日 無造作な言葉のやり取りが 時折ちくんと胸を刺す 鏡に映った見慣れない自分の顔に 疲れた笑みが浮かぶの…