あまいゼリーの海の底で、息苦しくてあたしは泣いたのですが、泣きつかれて見上げた水面のはるか上方では、シャーベットグリーンの星が、ちかちかとまたたいていました。「こんにちは。こんにちは。ここはとてもさむいんだ。」星はなんども言いました。そう…

うまれかわったらきっと きみのことを断罪するよ 約束する だから今は 抱きしめてもいいかなあ？ やさしいいちがつ あたしはずっと きみみたいになりたかった

きのう半透明の 欠けたビー玉をひろいました あしたはずっと 遠くの街にあります あたしが今いるってだけで 他にはなんの意味もない ここ 片翼のひこうきを持って 途方にくれた顔で あなたが立ってました 傷口にカチリと 欠けたビー玉をはめこんで みずいろ…

「今死んだら悪霊になるよ。」 「ずっと、さいごまで、そう思い続けるのが、理想。」 クライムはずっとそう言っていたから、 彼が本当に悪霊になったと聞いたとき、 わたしもシクスもなにも感じなかった。 ただ良かったなと思っただけだ。 強く思い続ければ…

きみが歌をうたえなくなっても 心配しないで ぼくが歌をうたってあげる 日がくれるまで 声がかれても きみのために おんちな歌をうたってあげる きみはあきれて 泣いて いやがって わらって つかれて そうしてきっと うつくしいメロディを 思いつく ながいな…

ほんとはあのひともこわいんだ いつだって ほんとはみんなこわいんだ うまくいってわらっても 失敗してへこんでも 外から見てるだけじゃわからない みんなどうやって はじめの一歩をふみだしたんだろうね？ その勇気を思うと いつだってぼくは泣いてしまう …

こんなにもやわらかい武器で 傷つくほどやわらかい心 不完全なぼくたちに与えられた 不完全なつるぎ ふりかざしてもあなたは笑ってる 知ってるよ 突いても払っても あなたに傷なんてつかない ふりまわしたつるぎの切っ先で 傷つくのはぼくだけ そして笑う あ…

つかめないものを つかむ 感触を何度も思い浮かべる つよくつよく ねつ造して焼きつけた そのイメージが ぼくをいつか そこへ みちびくんだ

からだにいくつもあいた穴からどくどくと中身がこぼれてくるので困ってしまったリトル・リリィは、おこづかいをはたいて透明なバンドエイドを127箱買いました。そうしてパパとママの寝静まった深夜、ぺたりぺたりと指の皮がむけるまで、からだ中にバンドエイ…

宇宙船には未来がないので 中ではみんな笑ってる 宇宙船の外は なんといっても宇宙なので だれも外へ出ようとはしない 期間限定で乗り込んだ宇宙船から 出られなくてうろうろうろ さまよい続ける人たち 指をさしてあざける人たち みんな止まってる 宇宙にた…

Ｘ年後 三十になったあたしが 髪に花をかざるのをゆるしてね ひとつに結わえて 左胸にたらした髪にかざった オレンジのガーベラをゆるしてね たるんだほおや口元を せいいっぱいぴんとはらせて 花をよそおう自分を あたしはきっとゆるせないから あなただけ…

きみをころしても きみをすきだったきもちは消せない だからサツジンは いつだってシツレンの役に立たない きみをころしても あたしの役には立たない 自覚しろよ ばか

てぶくろなんてくれなかったわたしのパパは代わりに大きなふくろをくれた穴のあいた大きなふくろけっしていっぱいにならないからサムイ夜にはくるまってねむれるすうすうする足首にリボンをかけてあのひとにあげるわアイジャナクテモありがとって笑える アリ…

1月の早朝 人カゲのたえた 通りにみちる 空気の痛さに むきだしのほおが しびれる 吐く息も凍る この良き日に 胸に刺したばら一輪 つんでちらした

言いたいことは全部言った？ なんて訊かないで コトバなんかみんなとけて消えたよ つめたいまぶたに落ちた やさしいことばひとひら ひとかけらの理不尽を信じて旅に出るんだ