天

勇者さまは言ったでしょう あのとき ぼくのことは撃てないって ぼくは魔物じゃない まがいものだからって 見てください 今ぼくは魔物でしょう まがいものではないでしょう それがどれほどすてきなことか 勇者さまにはわからないかな? ぼくは… ぼくたちは ず…

 贈

ほしいものはそんなにないの きみにきかれれば答えるけれど フルラのバッグ エマ・ホープのくつ ピエール・エルメのマカロン グローブ・トロッターのトランク ほんとうはどれもほしくはないの 問いかけるきみはかわいそう わたしは きみがくれるものなんてい…

 憧

きみのようになりたい きもちが不純に思えてきたのは いつのこと? きみが好きだよ そんなシンプルなことばでは そぎ落とされてしまう いとくずみたいなもので わたしはできてる ばらばらときれいにほどければ きみはきっと 全てのいとくずをひろって あみぐ…

 巣

足りないときは 眠るといい 眠れるように なればいい この場所を きみにあげたい この場所を ぼくは捨てたい

 環

手の甲にみっしりと生えた ふれれば刺すほどに尖った まっくろで固い毛 熊の毛皮みたい がっくりと項垂れたわたしの後ろから 肩越しにこちらを覗き込んで 君が言った 「もうすぐ寒くなるんだよ。」 それは10年も昔の話 夢の中の話 いつも背の向こうから話…

 空

待つことしかできなくなった こころの暗がりに住むもの それを喰うもの

 線

手癖でひかれた線はうつくしくないかなあ 口癖になった言葉は誰の胸も打たないかなあ この惰性を罪悪という 君の望む新世界は 拙い子どもの手が作っては壊す泥細工じゃないのかなあ ぼくの目は悪くて なにひとつハッキリとは捉えられないけど 惑わない君のゆ…

 純情

売り物じゃないから 売れ残りはしない 花を騙っちゃいるけど ひとひらの花弁も持たない きみの歯を砕く硬い石の純情

 ライン

くっきりと線を描く青く遠い水平 うっすらとゆがんだ美しいラインが ぼくの中になくて良かった 望めばいつだってこの目に映せる

 涙

世紀末の梅雨空 海陸空を溶かし込もうと降る 一緒になってと泣く

 my holy summer

つまさきがアスファルトを踏むたびに ひろがっては消えるものがあるよね 痛いくらい 言葉にならない きもちや色や きのうやあさってや その向こうにあるもの 役に立たない わらう君は正しい きれいにペイントされたつめも足首も 空耳に似た足音も 悪い魔法使…

 不安 

彼女の不安は明るい風の吹く日曜の昼下がり 上等なスピーカーから流れるツィゴイネルワイゼンみたいだった ちぐはぐで陰気でうるさくてまぶしかった

 奇跡 

彼女の中でゼロに戻った ぼくが今もキミの中で100である奇跡 大丈夫 でたらめだって奇跡

梅雨の隙間をぬうように洗濯してる そんなことでエネルギーを消費してるって思い込んでる

 ワナビー

どうなりたい? そんなもの 裏切るのもまた自分なんでしょう ばかばかしいよ 笑って切って捨てることもできず 何度も何度も問いかける どうなりたい? わたしはあなたになりたい はにかんで言えた頃もあったよ どうなりたい? 訊かないでそんなこと決まって…

ひとのシアワセが妬ましくなくなったら人間おわりよ 見てごらんエコノミックアニマルが人間のふりをしてるよ

春の花を多くの名で呼ぶ きみはあたしよりうんと物知りで さっきからカメラのモニタばかり見てる

 かわいいひと

きみが笑う場所にいつもいたい きみが泣くのは見たくない きみの涙を見るのはつらい だってきみは無関係のひとの前でしか泣かない どうか泣かないでかわいいひと きみを泣かすのが世界でぼくだけなら良かった

 ライライ

生きにくさは死に近いと思ってた この生きにくさが極まったとき わたしは死ぬんだと思ってた あなたに出会って そうじゃないと知って かみなりにうたれたような 衝撃が走った 生きにくさの果てに死なんかなかった それとこれとはまったく違うものだった 日々…

ビッグエッグがビッグバードの卵じゃないなんてがっかり!

 阿吽

かわいそうなのはひとりぼっちのシーサー だめだよ北の海はつめたい あたしが「うん」って言ってあげる

 カラフル

いつかあたしがこわれたら 呼ばなきゃダメよ 「ヘイ、カラフル!」 きらめいてとびはねて色を変える

 卵

赤い卵はあたためちゃいけない 裏返しの子どもがうまれてくるよ ばかねダーリンあなただってほんとはその卵からうまれた

虫歯にはガムをつめてね 公共料金の支払いはカードでお願い パラライカ

やわらかい骨をにぎりつぶして泣くんだなあ ちがうよ心は痛まない ことばがうまれるのは別の場所だよ

 地平

行きすぎた言葉に振り回されるきもちがかわいそうなの あたしの言葉はぜんぶいつか嘘にたどりつく その地平をきみと見るなんてまっぴら 黙っているしかないじゃない 不誠実といくら嘆かれても あたしはその場所をきみと見ない すがすがしくよく晴れた嘘の地…

わたしがあなたに伝えたいことなんてないことを あなたがはやく気づいて立ち去ってくれないかと思ってる それもまた伝えたいことであることに相違はない

 アイス・ピック

待つだけなんてだめだめ でもふりしぼった勇気が アイス・ピックだったらどうする?

 タマネギ中毒

サラダ・バーは女の子の味方じゃないな 耳もしっぽもついてるのに どうして君はタマネギじゃ死なない

 いのち 

てをはなしたらおわるいのちというもの つなぎとめるまたいのちというもの