2001-01-01から1年間の記事一覧

 虫さされ

胸のまんなかを虫にさされた 赤くだえんに拡がるアトに ペレトンアルファをぬった そうしたらしばらく じかにTシャツを着た胸のまんなかが ひゅうっとつめたかった まるで穴があいたみたい 思って笑った 彼のキスの落ちなくなった胸のまんなか ひさしぶりに…

 人でなし

人でないもの それを 人でなしといいます いいえ いいえ 人でなしは 人だから 人でなしと言うのです こんなに こんなに 人でなしなあなたでも 人でなしと言うとき わたしはちゃんとあなたを 人だと思っているのです ふしぎです ね

どうでもいいよ 何度言ったら世界は終わる? あなたさえ消えれば あたしの世界は死んで果てる

 白昼夢

「うそをつくのか?」 「いいや、夢をみんのさ」 「?」 「やつァいるよ。今は俺の目に見えないだけだ」 「それが夢か?」 「そうだ」 「セコイ夢だな」 「そうだな」 「信じてるのか」 「でなきゃ夢とは呼ばねえ」 「……そういうの、なんていうか知ってるか…

 TOUGH

1ヶ月と少し前 わたしを強いと言った人が 今日わたしを強くないと言った そのふたつは きっと同じ意味だったから そうだねと わたしはうなずいた そうだね わたしは強くない だけどその言葉を あなたのていねいな同情を 笑って受け入れられるくらいには わ…

 メンタルヘルス

終わりにしようか もうなにも迷いたくない 武器みたいに使ってる 薄くとがった紙キレ一枚で傷のつく こんなにも弱いカラダ それ以上に弱いココロに ふりまわされて生きてなんかいけないよ 遠くから吹く風に水面がゆれる あなたが右手をさしいれただけの かす…

 ガーベラ

中目黒の商店街を あなたと歩いてるとき 花屋の店先に好きな花を見つけた この花が好き 言ったら ガーベラ? あなたはイヤな顔をした 名前がきたない かたちが下品 カオばっか主張して 全身のバランスが悪い女みたい はきすてる口調で言って それから おまえ…

 雨

雨はあがった もう大丈夫 そう言う君の背に雨が降ってる つめたい雨だ かたくなに立ちつくす小さな背中に カサをさしかけてあげたいけれど そんなことをしたら きっと君はぼくを笑うだろう (カサなんかもう捨ててしまいなよ) (だって雨はもうあがったんだ…

 13月

25時の階段て知ってる? けっこうあちこちにあるよ たとえば君が通う高校の 第3校舎4階の音楽室の裏の階段がそうだ 今はもう開かない 屋上へつづくドアを ナナメ45度に見上げて 24時から1時間ちょっと ひとことも口をきかないで ひとりきりで待てば 25時の鐘…

 雨がキライ

春は人を殺す季節だって言うけどさあ、それってうそだよな。 ナガレが言った。 春じゃなくって、そこから続くなにかが人を殺すんだ。 桜を散らす春の雨。 洗われてつやめく青いみどり。 アスファルトをけずる夏の嵐。 そんなふうに、ぬれて匂い立つ、生きて…

 夕月

七月に住む少女の名は夕月 空がぼんやりとあわくけむる時間 路地うらや屋根の上 校庭のまんなかやプールの上で うすいブルーのワンピースのすそを ひるがえしてはねる あしくびにむすんだリボンは かみとおなじ色で これはくさりではなく きずななのだと笑っ…

 蝶

7月の夕方 まだ西の空を 夕日があかるく照らす時間 オレンジの蝶が わたしの胸からとびたつ もうずいぶん長いこと 胸の中でばたばたととびまわっていた 蝶は今やっと わたしから解放されて およぐように まうように 南へ向かって とんでゆく 夕日からこぼれ…

 君のパス

君のバスに乗りたかったねえ 乗ってぶうんと遠くに行きたかったねえ 途中下車をしたりしてね ばいばいって別れても ぐるりとめぐって また迎えに来てくれるでしょ? どこにやっちゃったのかなあ 子どもの手のひらくらいの うすいグリーンのキップ 君のバスに…

 希

強くあれ うまれたときから 思ってる この気持ちが ゆくてを暗く さえぎることなんか どうかずっと ありませんように

 蜜月

話したいことがあるのに うまくかたちにならない とてもつらい だけどそんなの なにも話したいことがないよりは ずっといい たったひとりで みちたりて こうふくだった わたしだけのハニームーン あの頃より そんなんじゃないと声をあらげて なみだぐんだり…

 やさしさ×3

知らない人にからだをまかせる これがわたしの選択だから かなしい顔はしないでよ やさしいきもちはもういいの いろんなベクトルにぐるぐるかさなりあう おもわくや誠意につかれてしまった すかすかでいいんだ やさしさはかたち みえないものでいっぱいにな…

 ダイハード

ほんとうは 叩いても壊れないような 潰されても死なないような つよいつよいものになりたかった わたしがこんなに弱くなければ 手を出せるひともことももっとたくさんあるのに そう思って悔しかった 守られるのも かばわれるのも 愛されるのも 囲われるのも …

 レインレイン

レインレイン ふる雨に キスしてわらった きみのりんかくが ゆがんで消える レインレイン はいいろの街

 midnight

夜中、一瞬だけさびしくなって、たとえばこんなときだれかに(だれかってだれかだよ)電話をかけたりメールを書いたり、そこまでいかなくても声に出して名前を呼んだりできれば、なにか変わるのかなって考えたりする。だけどわたしは夜中訪れる一瞬のさびし…

 夏至

話をしてもいいかな 今日まっしろなあじさいを見て うまれてはじめて あの花をきれいだと思ったとか 二台並んだスクーターに 同じくらい太った猫が一匹ずつ こんもりまるくなって 乗っかってたとか 大学で見た桃色にざわめく夕焼けが とほうもなくきれいだっ…

 むなしい

ゆめのなかで すきな人にだいてもらった かおがこんなに近くにあった うでやむねにふれる からだはしっとりとあつかった そんな話をしたら 友だちに むなしいね と 言われた ふん そりゃあんたにはそーだろーよ けっ と思って とてもむかついたけれど とても…

 いない

だいすきって なんど言っても きみにはとどかない それは きみがもういない からじゃなくて ぼくがもう いないからだ

 相手

あいしてほしいんじゃない あいしたいんだ だきしめてほしいんじゃない だきしめたいんだ だから 相手なんてだれでもいいんだ あなたじゃなくても あたしじゃなくても

 ハーフ

お父さんとお母さんがリコンした そうしたらあたしからはお父さんがなくなった 区役所の窓口に 二回目の連名の書類を出す前から ふたりの心や身体はきれいにわれていたのに 心や身体にかたちがついていっただけなのに その前と後では大ちがいだ 名字が変わる…

 Nくん

午後十時過ぎ 高田馬場駅で 山手線のホームにつながる階段をのぼりながら 肌にまとわりつく六月特有の雨に悪態をついていたら そんなにイヤかなあ。とNくんが言った ほら、俺、ずっと運動してたからさ。 梅雨も夏も汗をかくのもキライじゃないんだ。 わたし…

 じゆう

あついなら ぬげばいいんだ ねえ なにもこわくないよ このへやでは ふくをぬごうが にくをきようが だれもきみをとがめない だれもきみをみない ことに いきづまるまで きみはじゆうなんだ

 ヒア

髪を切ったら笑うよ だからもう少し待って もう少しだけ 世界は暗黒って気分に ひたらせてよ 今 世界でいちばん不幸って顔してる あたしを馬鹿にしてもいいの ただもう一度うなずいてよ うそでいいから もう少し もう少しだけ ここにいたいんだ あたしはそん…

 ちっそく

やらなくちゃいけないことが 束になってぼくをせめる 髪をいくらたてても足りない ちっそくしそうだ だけどこれがなかったら 本当にちっそくしてしまうことを ぼくは知ってる

 サラダ

午前三時 ばりばりと生サラダを食べる 小さな器に盛られた ローストチキンとアスパラガス サニーレタスにカラーピーマン にんじんとレタス ごまのドレッシング 五百八十円のサラダ 自分では決して買わない 昼間お父さんが買ってくれたサラダ おいしそう ひと…

 ひみつ

学食でごはんを食べながら 生理の話をするあの子は 廊下でキスするカップルを見ると ひどくおこる 明治通りを歩きながら 便秘の話をしたわたしに 十五分も説教をしたあの子は 観覧車の中でブラのホックを外す そんなふうに 女の子というものは 似ているよう…