13月

25時の階段て知ってる?
けっこうあちこちにあるよ
たとえば君が通う高校の
第3校舎4階の音楽室の裏の階段がそうだ



今はもう開かない
屋上へつづくドアを
ナナメ45度に見上げて
24時から1時間ちょっと
ひとことも口をきかないで
ひとりきりで待てば
25時の鐘が鳴る



キーンコーンカーン
いつもより少しつめたい音で
無感動に鳴る鐘がとまらないうちに
目の前の階段をかけのぼれ
そして扉に手をかけろ
許されるロスは3秒だけ
それ以上迷ったら鐘の音はおわる



さて扉はあいたかい?
その向こうにいるのが13月だ
やつはその小さい四角い部屋で
君や君以外の人がこぼした時のかけらを
集めてていねいにねりあわせてる



なんといっても
やつはグルメなアーティストだから
できあがりの形状はばらばら
君はそこで
シャンパンの香りのお茶を
ふるまわれるかもしれないし
口に入れた瞬間にとけてしまう
桜貝みたいな飴をもらうかもしれない



その種類は問題じゃないんだ
君はただ
やつが君に差し出したものを口に入れて
壁にかかったカレンダー
13番目の月のどこかに
君のことばを書いてくればいい



そして部屋を出れば
君の中には13ヶ月目がうまれる
だれのカレンダーにも存在しない
13番目の月だ



1年の最後
12月がおわったあと
君はその月で
し忘れた約束や
こわれた一週間を
取り戻せるようになる
寿命はほんの少しちぢむけど
そんなこと気にするまでもないだろう?



今夜も街のあちこちで
25時の鐘が鳴る
迷わず階段をかけのぼれ
その向こうに13月がいる



行ってやれよ
時間がほしいって言ったのは君だろう?
四角い小さなとじられた部屋
時のかけらをねりあわせながら
13月はいつまでも
君のことを待っているんだ