夏至

話をしてもいいかな
今日まっしろなあじさいを見て
うまれてはじめて
あの花をきれいだと思ったとか



二台並んだスクーターに
同じくらい太った猫が一匹ずつ
こんもりまるくなって
乗っかってたとか



大学で見た桃色にざわめく夕焼けが
とほうもなくきれいだったとか



だけど足を止めてながめる余裕もなく
すぐに空に背を向けて
トンネルをくぐったとか



坂をくだりながら
君が
君がいれば
一緒にいつまでも
空がひかりを失うまで
ひかりを失っても
並んで空を見ていられたのかな
と思ったとか



あめが降っても
汗をかいても
笑っても
肩がこっても
よそ見をしても
朝がきても
夜になっても
君を思うとか



だれに話しても違うんだ
君に話したいことばかり
ふえていく



だから話をしてもいいかな
君はもういないけど



あしたは夏至だよ
ぼくのキライな
君の好きだった
夏が来るんだ