蝶

7月の夕方
まだ西の空を
夕日があかるく照らす時間



オレンジの蝶が
わたしの胸からとびたつ



もうずいぶん長いこと
胸の中でばたばたととびまわっていた
蝶は今やっと
わたしから解放されて



およぐように
まうように
南へ向かって
とんでゆく



夕日からこぼれた点みたいに深いオレンジ
南に咲く花をめざしてとんでゆく



あの花のみつは毒なのに
吸えればそのまま海に落ちてもいいと言った



ここからうごけないわたしを置いて
とんでゆくオレンジの蝶
たよりない姿が
濃藍の空にまぎれて消える



ぬるんだ空気にしめった額をぬぐって
わたしはカラリと窓をしめた