2001-01-01から1年間の記事一覧

 T

ランドセルに わざと乱ぼうにほった きょう おぼえたばかりのアルファベット ざり、と すべったカッターナイフの先が 十字をつくる 「これ、なに?」 なおちゃんにきかれても ぜったいにこたえない あたしはあしたから タカナミをしょって 学校に行く

 ラズベリー

だいすきな歌を聴いて わたしが元気になれるくらいに わたしの存在が あなたの力になってるといい よわいこころ おもいからだ 問題はなにひとつ解決してなくても たちどまって少し笑う だいすきって思う 世界がほんの少し色を増す 意味はないよ だけど まほ…

 十和田

けいこうみどりのおゆに ふやけるまでつかった ふやけてもつかった 人工色のおゆにとけてゆく さいぼうのぎっしりつまった やわらかいひふのかけら 死んだひふのかけら さっきまで わたしの一部だったもの じっとみつめて ゆびですくって ばいばい って言っ…

 赤い花

ばらのコサージュを胸につけた あたしはばらじゃないけど あなたがあたしを ばらみたいだって言ったなら すぐにでも ばらみたいにきれいに咲くよ そうしていつか あなたが あたしのこころにも からだにも 興味がなくなったときも 忘れないで ばらみたいにあ…

DOLL GIRL

パパがママをぶった あたしはパパがきらいになった パパがママにさわった あたしはパパがもっときらいになった ママがパパをさした あたしはママをきらいになれなかった 代わりに パパをもっともっときらいになった あたしのことをきらいになった だけど イ…

 同じ日に死んだ人

彼は詩人だったから 彼の死をだれもが悼む すばらしい人がいってしまった ざらつく灰色の紙を握りしめて だれもがそれぞれの言い方で 祈りの言葉を口にする 彼女は詩人じゃなかったから 彼女の死をだれも悼まない その長すぎる生を 知っている人はだれでも …

 生きること

できることがたくさんあったら 生きるのはもっとラクなのかなあ あたしが言ったら あははとあの子は笑った (言ったねえ。) (じゃあ、あしたからあたしになる?) うん あたしはうなずいて 次の日からあの子になった そうしてあたしは 歌うことも 走ること…

 やさしさ

そんな高度なやさしさ わかんないよ 動物でもわかるように ちゃんとやさしくして

 断罪

女はみんな恋をすると思ってる 好きな男のこと以外 語ることばを持たないと思ってる あなたは清き隣人 なんの罪も犯していない ただ恋をしないわたしに死ねと言ってる あなたの暴力を断罪するまで 私は死なない

 月のかたち

ゆうべ見た月のかたちを まだリアルに思い出せる あたしは今ここにいる たとえもう あなたの目に映らなくても

 強く

逃げられないたくさんのものを だきしめて生きていきたい 否定して否定して その先にある肯定にたどりつきたいんだ そんな生き方正しくない。 笑うあなたをなぐらずにすむ もっと強い 今よりずっと強い人になりたいんだ

 Y/T

なくより笑おうよ かなしいけど やさしい夜も、とおい朝も 大丈夫 ちゃんときみのもとに来るよ だまるより怒ろうよ くるしいけど やさしい雨も、とおいひかりも 大丈夫 ちゃんときみの上にふるよ さけぶより歌おうよ さみしいけど やさしい過去も、とおい未…

 春の1日

今日はいい日だった あかるい陽がさしてて すこし風がふいてて 花がたくさん咲いてた 自転車を引きずりながら 子どものころ通った道を歩いて くだらないいくつかの話をした 傷つけるものはなんにもない おだやかな春の1日 アイスクリームを食べて コカ・コ…

本当のあたしなんてどこにもいない わかってて探してるんだ ほっといてよ あなたの目に映る女の子は あたしの1割 そんなこと忘れて はまりたくないんだ ずっと探してる 本当の自分 忘れて束縛を気持ちいいと思うなんて どうかしてる

 魔物

死んだ昨日の心配をしない強いあなたのあしたを食いつぶす魔物でありたい

 ほんとうは

うたいたい おどりたい さけびたい はしりたい だきしめたいあいしたい

 ゴミ

近くない昨日を たくさんつなぎ合わせて 同じ今日を生きる あしたあなたに降るゴミが やさしいものでありますように

すきま家具みたいな人生も悪くない 君に必要とされるなら

 メテオライト

キオに伝えたいことがあった。 あたしのこと。 ぜんぜん意味なんかない。 でもだいじなこと。 ぶかぶかのTシャツを着てた。 大きいだけの手であたしの髪をなでた。 「生きてるんだろ?」 「だったら、お前だって俺だって失うばっかじゃないよ」 そう言って…

 ことり

あたしをことりだと思ってる あなたはあたしがどんな顔をしたって ことりの羽しか見ない かわいいねとキスをして あたしの髪をなでる 愛してるってささやく そうね確かにあたしには あなたをかみくだく強いあごも鋭い牙もない あなたを押さえつける重い身体…

 run, fly and love

走ることはできますか? こんな枯れた足で 飛ぶことはできますか? こんな軽い羽で 想うことはできますか? こんな鈍い心で

 natural

死に近いところにいる気がする 別に病気ってわけじゃない ビルの隙間を人の足元を ゆらゆらとただよってる 死がすごく近くまで来てる気がする 白っぽいもやもやしたかたちのないもの 痛みや絶望にひかれて集まって じわじわ僕を取り囲んでゆく あなたにひと…

 プログラム

後悔するよって君が言った そうかもねって僕は答えた 正直に言うよ あのとき僕の胸に君はひとりもいなかった 君が必死で修正するプログラム 壊しても壊しても復活するプログラム それこそが僕の捨てたいものだった 君のプログラムに永遠にとけこめない 自分…

 あたらしいくつ

あたらしいくつを買おう タフで強情で でもちょっとセンチメンタルなくつ 向こう見ずに走り出せる 頑丈で前向きで無鉄砲で でもちょっとスキのあるくつ あたらしいくつを買おう 泣くのはやめて あなたの代わりにそのくつと わたしは どこまでもどこまでも ど…

 人の道

君は人として正しくない だけど君は 君として正しい

 ヨル

泣きたいよ ちっとも不幸じゃないけれど 耐えられない 朝がくること ずっと味方だった夜もさっき 死んでしまった

 夜の中

信じてるものと にくんでるものが 一緒になってわたしを責める 正しい1日がはじまるのがこわくて 必死でふとんに閉じこもった たくさんの夜 気が狂うくらい真剣に 朝がこないことを祈ってた あれからほんの数年 わたしはもう 朝がくるのがこわくない 夜の中…

 四季人

冬に生まれた人の背中には 水色の羽が はえる 春に生まれた人の踵には 桃色の花が ひらく 秋に生まれた人の手首には 透明な風が あそぶ 夏に生まれた人の額には 赤い星が やどる

 ムーンストーン

胸に落ちたルビーのかけら ダイヤモンドになりたいって泣く なぐさめるムーンストーン やさしいひかり 君のきもちが恋じゃなくても ぼくを好きにすればいいと笑う

 愛があるなら

戦えば? 青流が言った。 何それ。 思わず小さく吹き出したら、 青流はまるで職人のような顔で 自分の前に置かれたコーヒーカップのふち辺りをじっと見た。 愛があるなら。 そう、ぽつりと付け足された言葉に 何それ、と今度は笑えなかった。 (愛なんか、あ…