愛があるなら

戦えば?


青流が言った。
何それ。
思わず小さく吹き出したら、
青流はまるで職人のような顔で
自分の前に置かれたコーヒーカップのふち辺りをじっと見た。


愛があるなら。


そう、ぽつりと付け足された言葉に
何それ、と今度は笑えなかった。


(愛なんか、あるよ。)


うつむいたまつ毛が重くなるのが自分でわかった。
泣き出した私をちょっと困ったように、
だけどやっぱりとても生真面目な顔で青流は見ていて
そのことがありがたかった。 


負け戦だよ。


私が言うと、
痛いのはサビシイよりマシ。
今度は猫みたいに透明な目を窓の外に向ける。

 
この子に恋をすれば良かった。
思った私を叩くようにまばたきをする
青流の青いまつ毛はいつもと同じにただ、きれいだった。