同じ日に死んだ人
彼は詩人だったから
彼の死をだれもが悼む
すばらしい人がいってしまった
ざらつく灰色の紙を握りしめて
だれもがそれぞれの言い方で
祈りの言葉を口にする
彼女は詩人じゃなかったから
彼女の死をだれも悼まない
その長すぎる生を
知っている人はだれでも
良かったとひっそり息をつく
その日
新調したコンタクトがあわなくて
なみだばかり出た
かわいそうにと肩を抱かれた
わたしは詩人のことを考えていた
彼が最後に見た景色のことを
彼の最後の言葉のことを
彼女が意識を手放す前に出した
泥みたいな言葉はなんだっただろう?
暗くたゆたう視界に
彼と彼女は同じ平穏を見出したんだろうか?
(だとしたら人生は最悪に不公平だ。)
目を閉じて黙とうする
彼には心からの祈りを
彼女には今日こぼしたなみだをあげた
同じ日に死んだふたり