ゼリー

あまいゼリーの海の底で、息苦しくてあたしは泣いたのですが、泣きつかれて見上げた水面のはるか上方では、シャーベットグリーンの星が、ちかちかとまたたいていました。「こんにちは。こんにちは。ここはとてもさむいんだ。」星はなんども言いました。そうなの、とあたしはなんども言いました。けれどあたしの声はあまいゼリーにさえぎられて、星のもとまでのぼっていかなかったようでした。「なにもかもがとってもとおくてなみだがでるんだ。」そうなの、とあたしはなんども言いました。けれどヒヤシンスブルーの水面のてっぺんのそのまた上の揺れない青はあたしからあんまり遠かったので、ひとつぶの涙もあたしの元へは落ちてきませんでした。なので、あたしは星の代わりに泣くことにしました。あまいゼリーの海の底では、それくらいしかすることがなかったのです。「こんにちは。こんにちは。」星がちかちかとまたたくとき、あたしはかならず泣きました。


やがてお別れのときが来て、あたしは目を閉じてさようならと言いました。「こんにちは。こんにちは。」くり返す星にあたしの声はやっぱり届いていないようでした。





あまいゼリーを食べるとき、あなたが泣きたくなったなら、どうかこんにちはと言ってください。星はちかちかとまたたいています。あかいゼリーは今日もなみだの味がします。