リトル・リリィ

からだにいくつもあいた穴からどくどくと中身がこぼれてくるので困ってしまったリトル・リリィは、おこづかいをはたいて透明なバンドエイドを127箱買いました。そうしてパパとママの寝静まった深夜、ぺたりぺたりと指の皮がむけるまで、からだ中にバンドエイドをはりました。どくどくとこぼれる中身を吸い続けるバンドエイドは1日しかもちませんが、穴はほとんどふさがって、リトル・リリィはほっとしました。



そうして今夜もリトル・リリィはバンドエイドをはりかえます。ぺりぺりとバンドエイドをむく指先がひりひり音をたてていたみます。すべての穴をふさぎおえて、リトル・リリィはねまきを着て、髪をとかし、やっとのことでベッドの上におさまります。まくらをだいて、うんざりとため息をつきました。バンドエイドはあと13箱。きっとひとつきももたないわ。おこづかいももうないし。指はいたいし。こんなこともうやめてしまおうかしら?



中身がぜんぶこぼれてしまって、あたしがぜんぶなくなったら、ママはそれに気づくかしら?パパは泣いてくれるかしら?いいえいいえ。きっとさいしょからなかったことになるわ。あたしをなかったことにして、パパとママは別の子に言うわ。あいしてるよリトル・リリィ!



そうしてまた別の子にあけた穴をふさぐために、バンドエイドは大かつやく。ちょっとずつちょっとずつその子の中身を吸って、まいばん捨てられてゆくんだわ。あたしみたいに。



バンドエイドの上から、からだにいくつもあいた穴を押さえて、リトル・リリィは小さくつぶやきました。あたしがほしいものは、もう少しべつのものだった気がするんだけど?そのことばがさくりとひふを割って、手首に小さな穴をつくります。リトル・リリィはそのことに気づかず、まくらを戻してベッドに横になりました。オヤスミナサイ!!