2月

2月はいつも海にいる。
暗い冷たい海が好きなのだ。



「トク**ベツって**いう、の、は」
「サ*ミシイ**もん、だ、な」
「*♯××・・・*」
「お*れはトクベ**ツだった、か、ら」
「**イジワ**ルされたん*じゃ、な、い」
「イジ**ワ*ルされ***た、か、ら」
「ק×−××−♯**」
「ト*クベ*ツに**なっ*た、ん、だ」
「ジュ*ウ*サ*ンガ**ツが*いればい***い、の、に」



「13月?会ったことあるの?」



驚いて訊くと、
2月は寒くもないのに濃紺のコートのポケットに両手を突っ込んで、
背中を丸めるような仕草をした。
(まねっこなので非常に変だった。)



「***&**?」
「×**♪」



(ボカ。)



「*×**↓*な*い、け、ど」
「おれ**はあ*いつ**はす、き、だ」



「・・・なんで?」



「28、29、32*イ**ジョ、ウ」
「ひと*り**だ、け、ど」
「***ひ*とりじゃ**、な、い」
「×××*?◯◯×**!!」
「は、は、は」



ここにあたしがいるのに、
ひとり呼ばわりはひどいんじゃないの?
無視すンな。と思ってものすごくむかついたけれど、
笑った顔がとても可愛かったので許した。



しばらく並んで海を見た。
2月は凍える身体を暖めてくれるわけでもないので、
限界が来ればあたしは2月に背を向ける。
家へ帰る。



2月はぎこちなく手を振って
(あたしがするのを見て勝手に覚えた。)
「バ**イバ、イ」「**ー××∫♯!」だとか、
「**ラ*ヴ、リ、−」「**おや*す、み」だとか、
「シ*****ー、ヤ!」「××*××+♪**!」だとか、
あたしが教え込んだあいさつを適当に混ぜて投げる。
半分も言ってる意味はわからないけど、
あたしもおざなりに笑ったり手を振ってやったりする。



2月が見てるものはあたしには見えない。
だけど、2月の海には2月がいる。
だから2月の間だけ、あたしは海が好きだった。