悪くない

「そうやって仕方ないって言うことに慣れていくんだな」
「そうやって悲しい顔で言われると、まるで悲しいことみたいだね」
「おれは悲しいからな」
「うん?」
「お前がそんなことを言うのは聞きたくない」
「自分だって悪くないって言うじゃないか」
「おれはあきらめてない」
「……。みたいだねえ」
「笑うな」
「なんで。可笑しいじゃないか。だって結局あきらめるんだ」



「お前があきらめないのはもう仕方ないよ」
「そういうお前が好きだよ」
「だけど、お前があきらめないなら、おれがお前をあきらめる」
「可笑しいだろ。結局お前の思うとおりにはならないんだ」



「ひどいこと言うな」
「悲しい?」
「悲しいよ」
「でも、悪くないって言う。おれはそれが悲しい」
「?」
「なにもかも、悪くないなんて思えないよ。お前とは違う」
「春臣…」
「もう踏みにじるしかないじゃんか。おれはもうあきらめたい」
「ばか、泣くなよ。泣きたいのはこっちだ」
「泣くよ!なんでダメなのさ。こんな苦しいの、もういやなんだってば…」
「でも、おれはあきらめない」
「言ってるだろ。だから、おれがあきらめるんだ」
「ハル」
「これに、仕方ないは言わない。もう会わない」



「ほら、悪くないって言えば?」
「得意だろう?言えよ。これもそう悪くはないってさ…」