解放

「あしたのこともわかんないんだ」
「来年なんて訊かないでよ」


手荒く口走ったら君は小さく笑った
小さな声で言った


「今日のことは覚えてる?」


責めているのか
悲しんでいるのか
言ってみただけなのか
判断がつかなくて
ぼくは、やめてくれと思った


汗ばんだ手の中で震えない電話に
トラックが通り過ぎるたび揺れる地面に
イライラしてた





―― Where's the love song to set us free ? ――





「だから、んな余裕ないんだって」


もぞもぞと言った
うつむいた視界で汚れた靴に泣きそうだった


君は怒っていなくなれば良かったのに
早口で何かしゃべった
小さな声で言った


「電話来ないね」
















ぼくのこともわからないんだ
君のことなんか考えられない


言えれば良かったのに
君ははやくいなくなれば良かったのに
目をみはってぼくを見た
君と同じようにぼくも驚いていた


信じられないくらい
この腕は力強く動いて
君の足元で水たまりがぱしゃんと弾けて


ぼくはあしたも来年も
考えなくてよくなった
今日は永遠に忘れられない日になった