ノーリプライ

うすくたなびく
ももいろの雲に
あげました
「ノーリプライ」



うごかない
かたい横顔に
うまれてはじめて
わたしが投げたもの



あれは
沈黙ではなくて
拒絶でも
困惑でもなくて
とても勇気に
似たもので



わたしからあなたへの
さいしょでさいごの
コミュニケーション
だったのですが



気づかないあなたを
責めることばはなく



おちる夕陽にてらされて
のびる長いかげが
ぱちぱちとまたたく
しろい街灯のひかりに
こおりつく前に



うすくたなびく
ももいろの雲に
あげました
「ノーリプライ」



のこったものは
ほかになにもなく



とぎれとぎれに
南へとながれてゆく
ノーリプライを
わたしはいつまでも
ながめていたのでした