dear Father

あなたはいつも僕の部屋のドアを開けて君は自由だと言う



このドアは開いている
君はどこへ行ってもいい
わかるだろう?
「君は自由なんだよ」



はれやかなあなたの笑顔を見るといつも僕は笑ってしまう
長いこと一緒に暮らしているけれど
あなたに僕の気持ちがちっともわかっていないってことに
いつだって今更ながらに気づかされた



多分あなたは知らないでしょう
もしかしたらちょっとした興味もないのかもしれない
僕の身長があなたの腰に満たなかった頃から
あなたの叫ぶ自由なんか僕は全然ほしくなかった
僕がずっとずっとほしかったのは鍵のかかるドアだった
誰も勝手に入り込めない動かない部屋の中で
僕はひとりで眠りたかった
誰にも邪魔されずに
ただひとりで  



閉めても閉めても隙間のあくドアを開け放して
今日僕はこの部屋を出ていく
あなたは腕を組んで満足そうにうなずいている
茶色く汚れた歯をむきだして頑張れよと僕の肩をたたいた



あなたの知らない自由を僕はさがしにいく