フォーカス

まるで泥みたいだと思った


語尾のはっきりしない言葉
絶えずさまよう視線
だらしなくゆがんだ口元


きちんとしたかたちのあるものを何も持たない
君はまるで泥みたいな人間だった


ただ右手の中指にはめた
白い花をモチーフにした指輪だけがきれいだった
僕はそれだけ口にした
ぽかんと間抜けな顔で僕を見た
君は次の瞬間病的に白い前歯を見せて
少し嬉しそうにとても恥ずかしそうに笑った


その笑顔に
かしゃり。
僕の中でフォーカスがあった