月のサカナ

あきれるくらい昔になくしてしまった
そう思いこんでいたものが
本当は手を伸ばせば届くところにあるのだと教えてもらった



雨のあがった夕方
せわしい蝉の声
次第にかげになってゆく木立
後ろ髪を引かれながら家路をたどる子供たち



うすい水色に藍をとかした夏の空にのぼる
模造紙みたいにうすっぺらな黄色い月のうろこを見た
あのサカナの名はあの人に教えてもらった