あなたは恋をしたことがないと スーツ姿の若い男に言われる 知ったかぶりのみにくい笑みと 無粋な眼鏡と 恋なんて単語があまりに不釣り合いで 思わず笑ったら左頬を殴られた 右利きの人間は嫌いだった
たったひとりで旅をしているのだと言った その人は私の言葉にうすい茶色の瞳を細めるだけで 肯定も否定もしなかった 「ああ、もし。よろしければひとつ教えてくださいますか。 この花の名はなんというんです?」 立ち去ろうとした私の背に 古ぼけた茶色い帽…
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