つまさきがアスファルトを踏むたびに
ひろがっては消えるものがあるよね
痛いくらい
言葉にならない
きもちや色や
きのうやあさってや
その向こうにあるもの
役に立たない
わらう君は正しい
きれいにペイントされたつめも足首も
空耳に似た足音も
悪い魔法使いばりにまがった膝裏を
のばすだけの呪文にもならない
知ってるよ?
買ったばかりのサンダルを脱いで
はだしで歩いてゆければ
こんな夏とはすぐにさよならできる
だけど
つまさきがアスファルトを踏む
よれたヒフがつぶれて血がにじんでも
そのたびに
ひろがっては消えてくものがある
陽炎みたいにたちのぼる
きみには見えない
これがあたしの夏