ノーリプライ

耳横をびゅうと通りすぎた風に
ぎゅうとジャケットの前をあわせて
そうなんだ、とつぶやいた


午後十時
線路沿いの道を早足で歩いてく
誰もいない


ほんの少し歩調をゆるめ
相づちを返すように言ってみた
ああ、そうなんだ


つぶやきはびゅうと風に運ばれて
知らないだれかの耳元に落ちる
そのひとがぽつり吐き捨てた言葉に
無意味な肯定を返す


ノーリプライ
ノーリプライ
嘆くとがった肩先を
無駄に冷やしてわたしに帰る