LP

うつむいて砂粒をさらってた
もうずいぶん長いこと
ぱらぱらと降りそそぐ砂粒におわりはなくて
首をそらして
それがどこから降ってきているのか
たしかめることもなかった




街もひとも道路も
さびた灰色におおわれてゆく
ことばは喉の奥に沈んで
ゴーグルの向こうの瞳が笑う
すべての音がやんでしまった
なげく声も聞こえない
砂粒の降りつもる
肩をはらう
道をさらう
毎日がつづいた




ある日
さらった砂粒に
星粒がまざっていた
きらきらと光る星粒は
ほんの少し前
真上に星が来ていたことを教えた




私はそれを
嘆くべきだったんだろうか
叫ぶべきだったんだろうか
星が来ていた
星が来ていた
声をはりあげて
こぶしをふるわせて
泣きながら
伝えるべきだったんだろうか
星が来ていた
行ってしまった




砂粒よりほんの少し大きい星粒は
胎児のようにやわらかく息づいていた
手袋ごしにそっと握った
ゆるんでは縮む
ふくらんでは小さくなる
間隔がだんだんとゆっくりになり
やがて止まった
私はひらいた手のひらを返し
黄土色の粒をぱらりと地面に落とした




罪であると?
わかっていた
だけど
どんな声も出なかった




ゴーグルの奧の瞳がいっせいに上を向く
首をそらして誰もが
行ってしまった星をさがす
そうして見つける
また見つける
私たちの頭の上で
砂粒を降らせるもの




もう一度悲鳴をのんで
目に映るものを片端から呪うのはつらい
もう一度忘れて毎日をやり直すのは遠い
見上げてはいけない
かつて
うつくしい名前で呼んだ場所




砂粒はたえまなく
ぱらぱらと降りそそぐ
靴音をのみこんで
わずかにむきだした肌をうつ
肩をはらう
道をさらう
指先は見えない
星粒は深くうもれてゆく
私はひっそりと笑った




罪人でいい
さびた灰色におおわれたこの世界を
愛さなくては生きられない