なくしたんじゃなくて
はじめからもってなかったんだ
だからかなしくない
八十円のアイスキャンディー
にぎりしめた手のひらにすいつく
うすい木のぼうのあまいかんしょく
Tしゃつのすそ
たよりなくおよぐ
なまぬるい夕ぐれ
ありをころす
サンダルが四つ
じゃりをふむ音も
まぶたのうらにしみついた
まぼろしをぬぐうやさしい舌すら
はじめからでたらめだった
だからなつかしくない
とぶこともおちることもなく
きえた花火でしょう?
さようならよりずっととおく
ちらちらとさいごのひかりをまいて
ことしもあの子の夏がおわる