魚

手放した魚は
きらり背中を光らせて
暗い海へと戻ってゆく



見送るあなたの手に残る感触は過去
まぼろしに近い甘さで
いつまでもあなたの手を冷やすけれど
あなたは知ってる
あの魚を追ってはいけない



暗い海
つめたい水
レモンイエローの背中がきらりと光る
そこにあるのは絶望と孤独



踏み込んではいけないことを
あなたはよく知ってるから



透明な水が素足をすくっては離れていく
岸辺にただ立ちつくしている
後悔も希望もそこにはない
あなたはただ立ちつくしている



立ちつくしている