M.M

口に出したらなにか変わったかな?
ずっとあなたに言いたいことがあった。



愛とか執着とか呼び名なんてどうでもいいの。
わたしの世界ははじめからあなたでいっぱいになってる。
確かなのはそのことだけだもの。



やさしい言葉にひれふして、
つめたい視線にうずくまる。



朝も夜も休日も週末も毎日笑ってみせたよね。
だから今、わたしの身体がなにからできているのか、
きっとあなたは知らないでしょう。



口に出したら未来は変わったかな?
今とは違う現在にたどり着くことができたかな?
そうしたら、わたしの手の中にあるものも、
こんなにつめたいとがったカタイものじゃなくて、
もっとやさしいあたたかいなにかだったかな。



汗をかいて濡れたTシャツの背中がつめたい。
惰性で動いてた、時計がひとつ止まる。



静まり返った部屋の中、
なまぬるくしめった床に座り込んでくり返した。
「わたしはあなたの一部じゃない。」



口に出したらなにか変わったかな?
ずっとあなたに言いたいことがあった。
あなたのことが大好きだったよ。
ねえ……。



お母さん。



聞いてる?