未来

幼いころ
あしたはいつも目の前にあった
手を伸ばすまでもなく
ふれることのできる
身近なものだった



幼いころ
きのうはいつも後からついてきた
ふり返るまでもなく
話しかけられる
簡単なものだった



幼いころ
今日はいつもこの手に握りしめた
だれにも見せられない「なにか」だった



おしろい花のタネ
きれいな色水がつくれる花びら
じょうずに描ける白い石
目に映るすべてが色あざやかに奔放で
思惑や期待や泣きたいほど孤独な中傷が
背中に落ちていることも知らなかった



未来
しゃがみ込んだわたしがふと目を上げた
視線の先にあったもの
見下ろす瞳に映ったわたし
とりまいた幾つもの影
言葉ではなくすべてを感じ取った
あのときから
あしたは遠くなった
きのうは重くなった



未来
遠くへ続くその道
足がすくんで動けないわたしを見てる
澄んだ瞳のかくされた子ども
ときどき彼女は小さく笑う



真夜中を待ちかねたようにふる雨
夜明けに青く染めかえられた窓の向こう
まっしろな空から落ちてくる白いしずく
散らかった部屋を駆け抜ける
突風に似たひとすじのひかり
そんなものを目にしたとき



未来
幾つもの呪縛を背負い
歩いてゆくわたしの
ゆめを知るもの